令和7年8月2日、埼玉県内で発生した下水道管路の点検・清掃作業において、硫化水素中毒が原因とみられる災害により4名が死亡するという重大災害が発生しました。
この災害の発生を受けて、愛媛労働局長から、同様の作業を行う場合は、以下の酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)に定められた事項等に留意し、作業の安全確保を徹底するよう、会員の皆様への周知要請がありました。
硫化水素中毒を含む酸欠災害は、対策を講じていれば防止できる災害ですので、作業主任者を中心に対策の徹底を図ってください。
(以下、要請文書の抜粋)
下水中や堆積した汚泥内で発生した硫化水素は、静置状態では内部に封じ込められて大気中には拡散しにくいが、外部から攪拌等の衝撃を受けると一気に大気中に拡散されるため、作業開始時には硫化水素の濃度が低くても、作業中に濃度が急上昇する可能性があることから、事業者は、雨水が滞留しており、又は滞留したことのある下水道管路等内のみならず、し尿、腐泥、汚水その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのある下水道管路等内においても、作業を行うに当たっては、以下の事項を行うこと。
(1)適正な作業計画の策定
事前に得られた情報に基づき、硫化水素中毒防止について十分考慮された作業計画をあらかじめ作成し、当該作業計画に従って行うよう徹底を図ること。
(2)硫化水素濃度の測定の適正な実施
その日の作業を開始する前に硫化水素濃度の測定を行うとともに、作業中も継続して作業者の近くの硫化水素濃度の測定を行うこと。
(3)有効な換気の実施
作業者が作業を行う場所における硫化水素濃度を10ppm以下に保つように、 十分な能力を有する換気設備を用いるとともに、有効な方法で継続して換気を行うこと。
(4)必要に応じた空気呼吸器等・要求性能墜落制止用器具の着用
作業の性質上十分に換気を行うことが困難な場合は、作業者に空気呼吸器等(空気呼吸器、酸素呼吸器又は送気マスク)を着用させること。
また、硫化水素中毒にかかって墜落するおそれのあるときは、要求性能墜落制止用器具を着用させること。
(5)作業主任者の選任等(当協会で技能講習を実施しています。)
酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した者のうちから酸素欠乏危険作業主任者を選任し、適正な作業方法の決定、作業者の指揮、硫化水素濃度等の測定、測定用具、換気装置、空気呼吸器等の器具・設備の点検、空気呼吸器 等の使用状況の監視等の業務を確実に実施させること。
(6)異常な事態を把握するための措置の実施
監視人の配置等異常な事態を早期に把握し、関係者に通報できる措置を講ずること。併せて、異常な事態を把握したら直ちに退避できる体制を整えること。
(7)特別の教育の実施(当協会で特別教育を実施しています。)
労働者を作業に従事させる前に、硫化水素等の発生原因、硫化水素中毒等の症状、空気呼吸器等の使用方法、事故の場合の退避及び救急そ生の方法等についての特別教育を実施すること。
(8)二次災害の防止
救出時等の二次災害を防止するため、救出時には空気呼吸器等を使用させること。また、救出時の空気呼吸器等の使用等について、十分な教育訓練を実施すること。
愛媛労働局長要請文書全文(PDF 151 KB)
近年の硫化水素中毒の事例(PDF 749 KB)